準備段階のアーカイブ・・・その5

藤原直哉です。

私も今回ちょっと都市と経済の問題を俯瞰してみてわかったのは、文明の発展と都市の成長と経済のトレンドとしての成長はパラレルで、逆に文明の衰退と都市の衰退と経済のトレンドとしての衰退もパラレルなのですね。

成長する時はまずエネルギーが高まってそれから形があとからついてきます。衰退は形が出来上がってからエネルギーが抜けて、最後にガクッと形が崩れます。ということは、経済の前に都市あり、都市の前に文明ありで、文明ということはそこに住む人が集団意識として何を達成したいと思っているかということに行きつくのですね。同時に文明というのは目に見えないものであり、後世の人から見ればわかりやすいのですが、今を生きる人にはわかりにくいのですね。だからこそ、都市というわかりやすものが今を生きる人には必要になるのだと思いますし、その都市を作ることにみんなが中長期的に積極的に参画していくから経済が傾向として勃興するのだと思います。

では、今我々はどんな文明の中にいるのか。量の大きさを競うとか、衛生を競うとかいった近代の価値観がどうもピンと来なくなっている昨今であることはわかります。またロハスなものを求める価値観もよくわかります。でも、それが都市を作ってまで盛り上げていく文明になるのだとしたら、どんな都市の形がいいのか。私も今までこういう仕事をしていますからさまざまな都市の提言を読んだり見てきたつもりです。でもなんとなくイマイチでした。でも、なんかピンと来たのが行きすぎから戻るという価値観を持ってきたときに昭和の初めの景観に戻してしまうという考え方でした。デザインとしての景観を昭和の初めに戻す。自然と人のかかわりを昭和の初めに戻す。そこから量子と微生物の技術で文明発展をやり直す、そんな感じです。

ちょうど昭和のはじめと言えば震災復興建設に続いて満州国の建設が始まるわけです。あそこはそれまでの日本にはなかった近代的な都市計画で、旧市街を抱きかかえながら周辺部に全く更地から町を作るという発想です。それが戦後にも続いていくわけです。でも、今の人間性を感じない機能一点張りの都市が始まるわけですね。リオデジャネイロからブラジリアに首都が移った時のような感じですね。ということは、もう一度、前近代的と言
われた日本の町を、21世紀の新しい技術で作り直していけば、それまでの景観とか共生とか戦略的低エネルギーといった21世紀の「美徳」を生かしながら、しかし大変機能性の高い町ができるのではないかと思うのです。そうすると文明ということでいえば近代の行きすぎから戻ると同時に、江戸時代までにほぼ完成した日本らしい生き方を現代の開放経済体制と新しい技術体系の中でもう一度作り直すというようにとらえることができるかもしれません。なら江戸時代の町に戻せばという話にもなりますが、さすがに社会制度の違いや鎖国開国の違いがあって、そこまでは戻せないと思います。

すなわち、明治から平成まで一時中断したというか、起承転結でいえば「転」の時代だったのだけれども、江戸時代までに創られてきた日本文化の「起承」を受けて、「転」が150年ほどあったのだけれども、そのよいところや世界の現実はよく消化して、いよいよ「結」としての日本文明をこれから完成させるのだと。そう考えると我々はここで何か全く新しい時代に来ると言うよりも、まさに、まさに温故知新、起承転結の結をやるんだという理解になります。すなわち文明は明治大正昭和平成においてもまったく断絶しておらず、この150年間は転だったのだと。そして今まさに、日本文明完成に向けていよいよ転から結にステージが上がる時だと、そう考えればよいということになります。

何か壮大な話になってきました。どうぞみなさんご意見、ご感想をお寄せください。
ありがとうございます。